忘れな草の令嬢と、次期侯爵の甘い罠
減った賃料分の補填は、手持ちの株や証券を手放してまかなうしかないが、それもいつまで続くことか。

賃料の収入が干上がり、売却できる金融資産が尽きたら、家屋敷を手放すしかない。
祖母と二人、このヒースクレストを追い出され、町で小さな家でも借りて暮らすのだろうか。
自分に就ける仕事は見つかるだろうか…先を思うほど、テスの心は不安と焦燥に支配されてしまいそうだ。

「わたしとランスが記者として掴んだ情報ですけどね」
ランスはルシンダの夫だ。ルシンダともどもフェント家の悪行を阻止しようと、懸命に取材と調査を続けてくれている。
だがフェント家の財力の前に、ペンは悲しいほど非力だった。

「なぜここまで執拗にヒースクレストを狙ってくるのか疑問だったけど。フェント家の当主ゼドーは、娘のマリベルを、あのギュスターヴ侯爵家の跡取り息子と縁付けるつもりのようよ」

ルシンダの言葉に、グロリアの表情の皺がさらに深くなった。

「ヒースクレストの土地と邸宅までも持参金にすれば、ギュスターヴ家の歓心を買えると踏んでるんだわ。
ギュスターヴ侯爵家に娘が嫁げば、名実ともに名門貴族の仲間入りですからね。手段を選ばずに追い立ててくるわけだわ」
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