忘れな草の令嬢と、次期侯爵の甘い罠
その後の両家の明暗は分かれた。

キランは持参金を元手に事業を成功拡大させ、侯爵家の名に恥じぬ繁栄を取り戻した。
子孫たちもその商才を受け継ぎ、今やギュスターヴ家は名門にして富裕の大貴族だ。

一方、リベイラ家はその後何代も人の良さが仇になって投機に失敗したり、享楽に弱く放蕩してしまったりと、かつての栄光はみる影も無くなってしまった。

人はそれをギュスターヴ家の呪いと噂するようになる。

その暗雲を一掃したのが、若くして爵位を継いだテスの父だったのだ。
才知に恵まれ明朗な人柄で誰からも慕われた。残された果樹園などの収益を元手に、事業を展開し軌道に乗せた。
妻を迎え、愛娘のテスが生まれる。

貿易事業等に精を出す一方で地元の商工会にも顔を出し、人との付き合いを何よりも大事にしていた。
リベイラ家にまた陽は昇ったと誰もが思い、人々はそれを歓迎した。

父は大きな声でよく笑い、彼が笑い出すとまわりの人までつられて笑い出すほどだった。
太陽のような父と、その太陽のもと咲く花のようだった美しい母。
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