忘れな草の令嬢と、次期侯爵の甘い罠
ルシンダ、と追憶を断ち切るようにグロリアが言葉を発した。
名を呼ばれたルシンダは、あらためてグロリアに顔を向ける。
「———わたしはもう十分生きたと、この頃思うようになりました」
お祖母さま、テスは小さく悲鳴をあげる。
「そんなことおっしゃらないで」
「いいのです。良きこともそうでないこともあった人生でしたが、幸せな時期のほうが長かったのだし。
長生きといわれる年齢までこうして病気もなく生きてきたのですから」
感情を排した口調だった。
ですが、と決意をにじませてグロリアは言葉を続ける。
「テスだけは何に替えても、もう替えられるものなど残っていませんが、この命と引き換えにできるものなら…
テスの今後の幸せだけが、わたしの唯一の望みなのです」
「テスはもちろん幸せになるのだし、あなたにはそれを見届けていただかないと」
ルシンダはあえてだろう、さらりとした調子だ。
名を呼ばれたルシンダは、あらためてグロリアに顔を向ける。
「———わたしはもう十分生きたと、この頃思うようになりました」
お祖母さま、テスは小さく悲鳴をあげる。
「そんなことおっしゃらないで」
「いいのです。良きこともそうでないこともあった人生でしたが、幸せな時期のほうが長かったのだし。
長生きといわれる年齢までこうして病気もなく生きてきたのですから」
感情を排した口調だった。
ですが、と決意をにじませてグロリアは言葉を続ける。
「テスだけは何に替えても、もう替えられるものなど残っていませんが、この命と引き換えにできるものなら…
テスの今後の幸せだけが、わたしの唯一の望みなのです」
「テスはもちろん幸せになるのだし、あなたにはそれを見届けていただかないと」
ルシンダはあえてだろう、さらりとした調子だ。