忘れな草の令嬢と、次期侯爵の甘い罠
「テスの友人でないのなら、あなた方はわたしの友人でもないということです。
心配されずとも、誠実に人と付き合ってこられたのであれば、他にご友人がたくさんいらっしゃるでしょう」

金と私欲だけで積み上げてきたその足場のなんと脆いことか、リランの言葉はゼドーにその真理を突きつけていた。

リランは誰ともなしに周囲にぐるりと視線を巡らせると、おもむろに口を開いた。

「有意義な夜でした。そろそろお暇することといたしましょう」

テス行こうか、と促される。

ためらわず「ええ」と返事をした。
リランの腕に手をかけ、エスコートしてもらいながら、しずしずと広間から玄関のほうへ足を進める。

並んで歩く二人を見送る人の群れから、自然と拍手が巻き起こり、邸を出るまでそれはやむことなく鳴り続けた。
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