忘れな草の令嬢と、次期侯爵の甘い罠
第三章/嵐の夜に
* * *
その後の数週間でテスの身に起きたことは「慌ただしい」の一言だった。
舞踏会の帰り道はリランの馬車で送ってもらったのだが、その道中でリランはなんとテスにプロポーズをした。
その翌日にリランは改めてヒースクレストを訪れ、テスを馬車のドライブに誘い、そこでもやはり彼は求婚した。
「少年の頃からずっときみのことを忘れられなかった」
というリランの言葉は真摯に響いたけれど、テスはすぐに首肯する気にはなれなかった。
「早すぎるわ。わたしたちはまだ若いし、それに子どもの頃に会ったきりでお互いのことをほとんど何も知らないのよ」
ならば婚約を、とリランは譲らなかった。
「きみのそういう理知的なところも好きさ、テス。でもこれはきみを守るためでもあるんだ」
「わたしを?」
どういうことだろう。
「きみとリベイラ家をフェント一族から守るためさ。そのためにも、リベイラ家とギュスターヴ家の結びつきを公のものにしなければならない」
もし自分がリランとの結婚を拒んだら———
ギュスターヴ家との繋がりは無くなり、面目を台無しにされたフェント家は、リベイラ家を叩き潰すべく、唸りをあげて襲いかかってくるだろう。
その後の数週間でテスの身に起きたことは「慌ただしい」の一言だった。
舞踏会の帰り道はリランの馬車で送ってもらったのだが、その道中でリランはなんとテスにプロポーズをした。
その翌日にリランは改めてヒースクレストを訪れ、テスを馬車のドライブに誘い、そこでもやはり彼は求婚した。
「少年の頃からずっときみのことを忘れられなかった」
というリランの言葉は真摯に響いたけれど、テスはすぐに首肯する気にはなれなかった。
「早すぎるわ。わたしたちはまだ若いし、それに子どもの頃に会ったきりでお互いのことをほとんど何も知らないのよ」
ならば婚約を、とリランは譲らなかった。
「きみのそういう理知的なところも好きさ、テス。でもこれはきみを守るためでもあるんだ」
「わたしを?」
どういうことだろう。
「きみとリベイラ家をフェント一族から守るためさ。そのためにも、リベイラ家とギュスターヴ家の結びつきを公のものにしなければならない」
もし自分がリランとの結婚を拒んだら———
ギュスターヴ家との繋がりは無くなり、面目を台無しにされたフェント家は、リベイラ家を叩き潰すべく、唸りをあげて襲いかかってくるだろう。