忘れな草の令嬢と、次期侯爵の甘い罠
テスの両親は、テスが十二歳の時に馬車の事故で亡くなってしまった。

その後、リベイラ家の資産管理はルシンダの補佐を受けながらグロリアが行ってきたのだ。
昨年女学校を卒業してから、テスもその場に立ち会うようになった。

そうして知ったのは、生家の財政状況の苦しさだった。
ヒースクレストの広大な邸と美しい庭園を維持するだけで、かかる費用は相当なものだ。
さらに使用人への給金に、グロリアとテスの生活費に、税金。

今まではそれらの支出を、テスの父の事業の売却益や、遺された株式の配当、わずかな家作からの賃料などで賄ってきたのだ。

それでも、(つま)しく暮らしてゆけば邸を維持することはできたはずだ。

この半年ばかりで、収支は急激に減収に傾いている。
原因は明らかだった。
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