夜の帝王の一途な愛
「申し訳ないですが、アパート借りて貰っていいですか、勿論俺が家賃払いますから」
「はい、わかりました」
分かっていたが、その言葉を彼から聞くと、動揺を隠しきれなかった。
私は自分でもびっくりする提案をしていた
「離婚届けも書かないといけないですね、それと・・・」
自分の左手の薬指の指輪に手を掛けた。
「もう、外しちゃ駄目だよ」
彼の言葉が走馬灯のように蘇ってきた。
溢れる涙をぐっと堪えて、私は指輪を外しそして、彼に返した。
しかし彼は受け取らず、少し時間が欲しいと言った。
「もし、あゆみさんが良ければ、離婚はちょっと待ってもらっていいですか」
「大丈夫です」
そして、私はアパートに引っ越して、彼と別々の生活を始めた。

 アパートに引っ越してから、一週間が過ぎた、ある日の事、彼から電話があった。
「あゆみさん、申し訳ないけど、一年前と変わっていて、何が何処にあるか分からないから、ちょっと来てくれるかな~」
思いがけない彼からの呼び出しに、胸踊らせてマンションへ向かった。
「彼に会える」
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