夜の帝王の一途な愛
術後の彼は人が変わったように、以前のような自信は無く、笑顔も消えてしまった。
そして、夜中に魘されるようになり、手の震えが起きるようになった。
別の部屋で寝ている私は、彼に呼び出され震えている彼の手を握る。
私が彼の手を握ると暫くして震えが治まる
彼はすやすやと眠りにつき、朝まで手を握っている事が日課になった。
いつか、子供の事話しなくちゃいけないけどこんな状態じゃ話出来ないと思った。
 定期健診の日、私は一人で産婦人科へ向かった。
彼には買い物へ行くと言って出かけた。
思ったより時間がかかり、彼は心配して私の携帯へ電話をかけてきた。
「あゆみ、まだ買い物終わらないの?随分時間がかかっているみたいだけど大丈夫?」
「大丈夫です、これから帰ります」
「駅前のスーパーだろ、車で迎えに行くから待っていな」
「あっ、今病院へ来ているので、終わったら帰りますから大丈夫です」
「病院ってどこか悪いの?何処の病院?迎え行くから何処?」
彼はすごく心配してくれている様子が伝わってきた。
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