夜の帝王の一途な愛
「夜、眠れるようになったって言っていましたけど、その後は大丈夫ですか?」
「大丈夫だよ」
彼はちょっと考えて訂正した。
「いや、やっぱりまだ眠れないな、だからあゆみが退院したら、また俺の安定剤になってくれる?」
彼の言っている事が、どういう意図があるのか分からなかった。
「いいですよ」
「ほら、安定剤ってずっと必要みたいだから・・・ずっとよろしく」
「はい」
「また明日来るな」
まだ、私、彼の役に立てる事が出来る、一緒に居られる、素直に嬉しかった。
 そして退院する事が決まった。
しかし、先生からショックな事実が告げられた。
「退院後、普通の生活に戻る事は構いませんが、体調に十分注意してください、それとこの先妊娠の可能性は難しいとお考え下さい」
「分かりました」
微かな希望はあったがやっぱり駄目なのか
現実を突きつけられてちょっと落ち込んだ。
彼に伝える事が、ちょっと気が重いなと感じた。
 退院の日、彼は迎えに来てくれた。
「お世話になりました」
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