私の心の薬箱~痛む胸を治してくれたのは、鬼畜上司のわかりづらい溺愛でした~
私が不貞腐れるように心の中で吐き捨てた刹那、私の左頬に大きな手が触れた。
さっきまでのように強引に顔を向かせるんじゃない。
優しくただ触れるだけのその手に、私は思わず息を呑む。
「俺は、このまま水無瀬がつらい思いをし続ける方が、お前の母親は苦しむと思う。俺もお前がつらいばかりなのは見ていたくないしな」
「っ、な、なんっ……」
「だからさ、見返してやれ。お前の本来の姿で。少しだけ勇気を出して自分を変えてみろ。お前の人生はお前のものだ。村上のものでも、佐倉やお前に仕事を押し付けるやつらのものでもない」
「!!」
いつも厳しい主任の目もとが、ふわりと緩んだ。
「お前は、お前の人生を大切にしろ。俺が一緒に大切にしてやるから」
「~~~~っ」
鬼畜上司が優しい。
こんなのいつもの主任じゃない。
きっとそのせいだ。
私の目から、また大粒の雫が流れ出したのは──。