私の心の薬箱~痛む胸を治してくれたのは、鬼畜上司のわかりづらい溺愛でした~
あの日の翌日、自分に割り当てられた仕事はきちんとしようね、と声をかけたけれど、彼女の中で私の言葉なんてないようなものだったみたいだ。
新人期間を終えて、自分からやりたいと仕事を引き受けたにもかかわらず期日までに終わらせないままに定時上がりだったり、午後から休みを取ったりと、仕事を投げ出す日々が続いている。
きっと優悟君とのデートやそれに向けてのヘアサロンやネイルに時間を費やしているんだろう。
ということは今日も……。
あの日から優悟君はしきりに私に話しかけようとしてくる。
だけど仕事中に、今までずっと内緒にしていた私との関係を口にするわけにもいかない彼とは、結局二人きりでプライベートな話をすることもなく今に至る。
LIMEのメッセージで、私と話したいという内容のメッセージは届いているけれど、私は当然断り続けている。
それはどこかの誰かの仕事のしりぬぐいで残業しなければならないこともあるから、というのもあるけれど……何を離せばいいのかわからない、という情けない理由もある。
見た目は変わっても、内面はまだまだくらげのままだ。
「先輩? 聞いてます~? じゃ、よろしくお願いしますね?」
「っ」
ぐっ……と無意識に自分の拳に力が入る。
手のひらに握りしめられる小さなイチゴミルク。
うまく言葉が出てこない自分が情けない……。
私が悔しさに唇を噛み締めた、その時──。
「その仕事はお前がやるべきものだ。水無瀬に投げるな」
「しゅ、主任っ」
背後から現れた般若のような顔の主任に、私たちは揃って肩を跳ね上がらせた。