私の心の薬箱~痛む胸を治してくれたのは、鬼畜上司のわかりづらい溺愛でした~

 長く白い廊下を歩き、第一会議室へと向かう。

 主任との打ち合わせが終わったら久しぶりに早く帰宅することになる。
 何をしよう?
 いざとなったら思いつかない。

 いつも遅い時間になるから最近はコンビニ弁当が多かったけれど、久しぶりに何か手の込んだものでも作ろうかしら?
 でも一人暮らしでそんな手の込んだものを作っても……という思いもある。
 うん、決めた。
 ゴロゴロしよう。
 そして何か簡単なものでも作って、帰りにスイーツでも買ってそれを食べて。
 ゆっくりとお風呂に浸かってしっかりと眠る。

 最高の贅沢だ。

 そんなことを考えているうちに第一会議室が見えてきて、思わず背筋を正した。
 その時だった。

「海月!!」
「!! ……村上、君……?」

 後ろから呼び止められ振り返ると、息を切らして私の元へ駆けてくる優悟君の姿。

 追ってきたのだろうか?
 いやまさか。
 佐倉さんが言っていたカッコいい彼氏というのはおそらく優悟君のことだろうし、なんでここへ?

「どうしたの? 何か用だった?」
 あれから1週間。
 思ったよりも平然としている自分がほんの少しだけ意外だ。

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