私の心の薬箱~痛む胸を治してくれたのは、鬼畜上司のわかりづらい溺愛でした~
入社してすぐだった。
明るく、誰に対しても優しく接する優悟君を好きになったのは。
だから告白された時は疑うこともせずただ舞い上がったし、あの時の私は表面上の優悟君しか見えてなかった。
でもそれが嘘だと知って、私に残ったのはただ、虚無だ。
好きでも、嫌いでもない。
ただの、無。
好きの反対は嫌いではなく無関心だという。
多分今の感情は、まさにそれだろう。
「あるよ!! すっごいあるよ!! 話がしたいって何度も言ってるのに忙しいだのなんだので1週間だぜ?」
「仕方ないよ。ずっと残業続きだったんだもん。佐倉さんの仕事だけど」
「ぐっ……そ、それでも話ぐらい……!!」
「同じ部署なんだから、話ぐらいいつでもしに来れば良かったのに」
これは意地悪だったかもしれない。
私たちが付き合っていたということを隠してきた優悟君にとって、それはできないことだから。
皆の嫌われ者のくらげと付き合っていただなんて、知られたくないものね。
言葉を詰まらせた優悟君に、私はただ無感情に笑った。