私の心の薬箱~痛む胸を治してくれたのは、鬼畜上司のわかりづらい溺愛でした~

「それで、何の話? 別れようっていう話なら私はもう了承して別れたはずだけど?」
 淡々と口にしたそれに、優悟君が顔をひきつらせた。

「そ、それは……、えっと……。で、でもさ、嫌だろ!? 海月は!! 俺がいなきゃ寂しいだろ!? お前、俺のこと好きだしさ。本当は別れたくなくて、勢いで了承したんだろ!?」
「っ、ちょ、離してっ」

 私の両肩を掴んで迫る優悟君に私は全身をこわばらせる。

 俺がいなきゃ寂しい?
 寂しくないわ。
 だって元々いないようなものだったんだから。
 特に1ヶ月経ってからは、何かしら理由をつけて一緒に帰ることもデートもしてもらえなかった。

 俺のこと好きだしさ?
 もうそんな感情はないわ。
 あの日、彼の本心を聞いてから、私の中のそんな感情は壊れてしまった。

 悲しくて悔しい気持ちは全部、あの日、主任が暖めてくれた。

「海月、メガネ外したらめちゃくちゃ可愛くてさ、びっくりしたよ。今夜食事にでも行かないか? そこでゆっくりこれからのことも話し合って──」
「あ、遠慮します」
「え?」

 優悟君の言葉を遮って出た言葉は、拒絶の言葉。

 嫌なことは嫌と言う。
 いつも主任に助けられてるだけじゃだめだ。
 私だって変わりたい。
 私だって、私を大切にするって決めたんだから。
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