私の心の薬箱~痛む胸を治してくれたのは、鬼畜上司のわかりづらい溺愛でした~
「水無瀬さんは彼氏とかおりはるん?」
確かこの人は、おじさんたちの中で唯一若い取引先のエース木谷さん。
同い年位だろうか。
優しそうな雰囲気で爽やかイケメンな彼は、きっとうちの主任のように部署でもモテているのだろう。
まぁ、主任の場合は顔は良いのに怖いから誰もアタックはしないんだけど。
観賞用、というやつなのだろう。
「えっと……い、いません」
いたけど罰ゲームでした!!
と口から出かかったけれどさすがにみじめすぎるので酒と一緒に呑み込む。
「おらんの!? そんなかわええんに」
「ならうちの木谷とかどうや? 将来有望やで!!」
「せやせや!! 美男美女でえぇやんな」
「まぁ吞みな吞みな」
おじさんたちがわらわらと一斉に木谷さんを勧めてくる。
酒と共に。
ひぃぃい!! も、もう限界だからっ。
勘弁してぇぇえっ!!
ニコニコしながら心の中で叫んだその時。
「すみません、会社に報告をしなければならないんです。水無瀬ももう限界のようですし、私達はこれで。」
主任がそう言って私の手を引き立ち上がらせると、私を支えながら座敷を後にした。