私の心の薬箱~痛む胸を治してくれたのは、鬼畜上司のわかりづらい溺愛でした~
「正直、なぜ目で追うだけでお前に近づこうとしなかったのかと、情けない自分を責めた。あの日、1人泣くお前を見た時、一時でもあいつにお前を取られたことに苛立ちを覚えた。それと同時に、俺はもう大切なものを諦めないと決めたんだ」
「主任……」
惚けている私に、主任の真剣な眼差しが向けられる。
逃れることを許さない、真っ直ぐな瞳。
「水無瀬。俺はお前が好きだ。俺のそばは多分、色々……大変だと思う。だけど必ず、お前を守ってみせるから。……だから──俺の傍にいてほしい」
「っ……」
押し込めようとしていた主任への思いが一気に流れ出す。
自分の気持ちに、素直になっても良いだろうか?
私が主任の隣にいて、迷惑じゃないだろうか?
釣り合いが取れないんじゃ……?
いろんな思いが混ざり合って、だけど最後に残った思いは、たった一つ。
「私も、主任が好きです」
口をついて出てきた言葉。
自分でも驚くほどに自然に、何も考えることなくするりと飛び出したそれに、主任の瞳が大きく見開かれた。
と同時に私の腕は勢いよく主任の手によって引かれ、身体はその逞しい胸に引き寄せられた。
ドクンドクンドクン──。
耳にダイレクトに響く打ち付けるような早い心音に、妙に心が落ち着く。