私の心の薬箱~痛む胸を治してくれたのは、鬼畜上司のわかりづらい溺愛でした~
「大切にする。俺はあまり、表立って優しくできるような器用な人間ではないが……」
「いいえ。主任が優しいのは、十分わかってます。新入社員の時からずっと、私にイチゴミルクを差し入れてくださったの、主任ですよね?」
「!! 気づいていたのか?」
「はい。この間の優悟君とのトラブルの時、主任からイチゴミルクの匂いがして」
始めはまさか、とは思った。
あの鬼主任とイチゴミルクの飴がどうしても結びつかなくて。
だけど冷静に考えてみて気づいたのだ。
その、わかりづらい思いやりに。
「主任、不束者ですが、どうぞよろしくおねがいします」
「ふっ、なんだそりゃ。嫁入りか。まぁ、いずれはそうなるからいいが……。こちらこそよろしく」
ゆっくりと近づいてくる端正な顔に、つられるように目を瞑ると、触れるだけのキスが落ちる。
「とりあえず、ここまで。あまりやりすぎると、場が場だ。止められなくなる」
「っ……!!」
止められなくなる、って……!!
止めないでほしい。
でも止めてほしい。
二つの矛盾した感情が脳内をめぐる。
「物欲しそうな顔するなって」
「なっ、そんな顔──っ!!」
「ゆっくり進んでいこう。心配しなくても、時間はたっぷりある。何十年もな」
「っ……はい……!!」
そして私たちは、距離を取っていた布団を隣通しにくっつけて眠った。
すぐ隣に主任がいると思うと緊張して、しばらく目を瞑るだけで眠ることはできなかったけれど、いつの間にか睡魔はやってきて、私は夢の中に落ちていった。