私の心の薬箱~痛む胸を治してくれたのは、鬼畜上司のわかりづらい溺愛でした~

 それからの仕事はもう散々だった。

 やるべきことが頭に入ってこないし、主任に指示を頂いている時もぼーっとして叱られてしまったし。
 頭の中にめぐるのは、トイレで聞いたあの話だった。

 本当に主任は皆川さんと付き合っているんだろうか?
 結婚前提に?
 私とのことは全部嘘だったのか?

 考えれば考えるほど泥沼にはまって出られない。

 そういえば明後日は会社の創立パーティだっけ?
 もちろん皆川さんも来る、んだよね……。
 行きたくない。
 だけど行かなきゃ。
 一応仕事の一環だもの。

 家に帰ったらパーティで着ていくスーツを出しておかないと。
 友達がいないから結婚式に呼ばれることもなくて、ドレスなんてもの家には無いから、私はスーツ参戦だ。
 せめて就活生みたいにならないように、胸につけるコサージュくらいは買っておこう。

「はぁー……。帰ろ」

 私は深いため息をついてから立ち上がった。
 その時だった。

「水無瀬」
「主任……」

 今一番合うのが一方的に気まずい人──主任が私に声をかけた。
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