私の心の薬箱~痛む胸を治してくれたのは、鬼畜上司のわかりづらい溺愛でした~

「水無瀬……。……変わったな」
「へ?」

 ぴりついた空気の中、主任が言って、空気が揺らいだ。
 さっきと変わって柔らかい表情。
 おおよそ上司に発するような物言いでなかったにもかかわらず、どこか嬉しそうなその表情に、私は眉を顰めると、私の身体は一瞬にしてすっぽりと主任の大きな腕に包み込まれてしまった。

「っ、は、離してくださいっ!!」
「嫌だ」
「嫌だ、って……。彼女がいるのに何で──」
「自分の彼女抱きしめて何が悪い?」
「はぁ!? 私じゃなくて皆川さ──」
「冗談はやめてくれ。あれは身内だ」
「へ?」

 み……うち……?
 振り払おうとしていた動きを止めた私は、目を大きく見開いて、私を抱きしめる男を見上げた。
 困ったように、でも愛おしそうに私を見下ろす主任の顔に、思考が付いて行かない。

「やっぱり勘違いしてたか」
「勘違い?」
 私の言葉に、主任は深くうなずいて口を開いた。

「由紀は俺の彼女なんてもんじゃない。あれは俺の──双子の姉だ」
「!?」

 双子の──姉!?

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