私の心の薬箱~痛む胸を治してくれたのは、鬼畜上司のわかりづらい溺愛でした~
くらげ。
それは私のことを陰でこそこそと言っている子達が使う、私を示す言葉だ。
くらげを漢字で書くと海月《みつき》と同じ字になるから、【暗い暗い、根暗のくらげちゃん】、と……。
何でこの人たち、私たちのこと?
秘密にしていたはずだよね?
何で……。
何で優悟君──笑ってるの?
「あー、くらげね、今距離取ってるから、そろそろ自然消滅させたいなーって。いやー、一か月よく我慢したよね、俺。賭けに負けたばっかりに罰ゲームでくらげに告白とかさ。しかもくらげのくせにオーケーするとか……ツイてなかったわー」
…………………え……?
罰、ゲーム?
我慢?
くらげのくせに?
脳みそが、うまく動かない。
「まー、確かに予想外だよなー。くらげお堅そうだし、なんか自分に自信なさそうだしさ、”私なんかが村上君と付き合うなんて分不相応だから……”とか言って断ると思ってたわ」
「俺も俺も!! くらげと付き合うことになったお前を物陰から見てて噴き出しそうだった!!」
物陰から……あの告白を、見ていた?
嬉しかった記憶に黒い染みが落ちて、少しずつ塗りつぶされていく。
これは夢なんだろうか?
夢なら早く醒めてほしい。