私の心の薬箱~痛む胸を治してくれたのは、鬼畜上司のわかりづらい溺愛でした~

心の傷は、塞がりました

 ドレスを受け取ったあの日。
 結局名前呼びになった以上のことはなく、夜中に未婚女性の部屋にいつまでもいるものではないと言って彼は帰った。
 そして翌日も何事もなかったかのようにお互いの仕事をし、創立パーティ当日となった。

 都内のホテルで行われるだけあって豪華な食事が並び、社員だけでなく他社の重役たちも招待されている。

 私は雪兎さんにもらったドレスとアクセサリーを身にまとい、受付を済ませ、只今ぼっちで待機中だ。

「……視線が痛い」

 目立たないようにと隅に張り付き壁と化しているけれど、ちらちらと私の方に視線が向けられる。
 それもそうか。
 くらげ女がこんな綺麗なドレスを着て着飾っているんだから。
 物珍しいのだろう。

 肝心の雪兎さんは会場の真ん中で来賓者へのご挨拶中。
 可愛い女の子たちを引き連れて。
 その中にはちゃっかりと佐倉さんも混ざっている。

 まぁそうよね。
 今日の雪兎さんの姿、いつにも増してカッコいいもの。
 ……なんだかものすごく……モヤモヤする。

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