私の心の薬箱~痛む胸を治してくれたのは、鬼畜上司のわかりづらい溺愛でした~
「お前らなぁ……。ま、くらげもひと時の夢が見れたってことで良かったんだよな。あんなでっかいメガネかけて黒髪を一つくくりにしたダサい女、一生男となんてデートすらできなかっただろうからなー。おっと、もうこんな時間か。悪い、これから用事あるから俺行くわ」
「まさかデートか!?」
「りんちゃんから飯誘われてな」
「うわー羨ましい!! りんちゃんて、うちの部署のダントツ可愛い新人ちゃんの佐倉りんちゃんだよな!? 羨ましー!!」
「そりゃくらげかりんちゃんかなら断然りんちゃんだよなー」
「へへっ、そういうこと。じゃ、先行くわ。お疲れー」
「おう、お疲れー」
行ってしまった……。
足がすくんで、出ていけなかった。
さっきのことは本当なのか、真偽を確かめることもできないまま。
痛い。
痛い。
心がずんっと重く痛む。
胸が苦しい。
重痛い。
呼吸が、うまくできない。
この痛みが、夢ではないということを知らせてくる。
その場に居続けることは出来なくて、私は自分の部署の部屋へとふらふらとおぼつかない足取りで戻っていった。
現実は……いつも残酷だ──……。