私の心の薬箱~痛む胸を治してくれたのは、鬼畜上司のわかりづらい溺愛でした~

鬼畜上司の様子が変だ



 誰もいない部屋。

 私のデスクの上には、誰かからの差し入れか、イチゴミルクの小さな飴玉が一つ。
 私が知らない間に度々置いてあるそれは、私の秘かな心の支えだ。

 いつもと同じ。
 いつも一人、押し付けられた仕事が全部終わるまで、私は仕事を続ける。

 断ったら、もう、声すらかけてもらえないような気がして。
 一人が怖くて。
 影でいろいろ言われていることを知っていながら、私は彼女たちの言葉を聞いてしまう。

 あぁでも、今日は誰もいなくて助かった。
 だって私、今きっとすごく汚い顔してる。

「うっ……うぅっ……」
 涙が頬を伝って静かに流れる。
 止めようと思うのに、止められない。

「ごめ、なさい……っ。私が……っ、ダメで……っ」

 怖い。
 捨てられるのが怖い。
 嫌われるのが怖い。

 大切なものは皆、私を捨てていってしまう。
 その現実を、私は痛いほど知っているというのに。
 期待して、舞い上がって、でも現実は残酷すぎて……。

 それでも縋ってしまうのは、きっと──。

「水無瀬?」
「!!」

 誰もいないはずの部屋で私を呼ぶ声。
 私は思わず振り返ってしまった。
 ひどい顔をしているのも忘れて。

「和泉、主任……?」
 
 振り返るとそこにいたのは、打ち合わせに出ているはずの鬼主任。
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