私の心の薬箱~痛む胸を治してくれたのは、鬼畜上司のわかりづらい溺愛でした~
「っ、お前、どうした!? 何か──」
「なっ、ナンデモナイデス」
慌てて顔を背けるも、涙は止まる気配もなく流れ続ける。
「何で片言なんだよ」
「め、目にゴミが入っただけですのでっ!!」
「目にゴミが入っただけでそんなダラダラ涙出るか!!」
「大粒のゴミが!!」
「眼科行け!!」
「ひゃっ!?」
突然両手で両頬を挟まれ強引に主任の方へと振り向かされる、涙でぐしゃぐしゃになった私の顔。
涙のせいでメガネが曇って主任の顔がよく見えないけれど、きっとひどいものを見たって顔してる。
はやく顔を背けたいのに、主任の大きな手がそれを許さない。
「話せ」
「へ?」
「何があったか話せ。話すまでこのままだ」
鬼!?
しかもすごい力だから私の力じゃ振りほどけない……!!
今日は厄日なの!?
どうにもならない力の差の前に、私は肩をがくんと落とし、抵抗する力を収めた。
「……」
「……」
なんて切り出したらいいんだろう。
初彼に舞い上がってたら罰ゲームで仕方なく付き合ってただけでした、だなんて……。
私が言葉の選択に迷っていると、頭上から大きなため息が落ちてきた。
「村上か?」
「!! 何でそれを……っ!?」
「お前たちが付き合ってることは気づいてた。まぁ、気づいたのは俺ぐらいだろうがな」
「うそ……」
あれだけバレないように厳重に注意しながら付き合っていたのに……。
主任っていったい……。
「で? その村上と一体何があった? 別れ話にでもなったか?」
「っ……。……そもそも、付き合うつもりなんてなかった、みたいです……」
思わず零れた真実に、一気に険しくなる主任の顔。
「おい、詳しく話せ」
「……はい」
私は観念して、これまでの経緯、最近の二人の距離感、そして先ほど見て聞いたことを、全て主任に話した。