私の心の薬箱~痛む胸を治してくれたのは、鬼畜上司のわかりづらい溺愛でした~


 あれだけ流していた涙はぴたりと止まって、ただただ、無、だった。
 話し終えて顔を上げれば、そこには一層険しさを増した主任の顔がすぐそこにあった。

「ちっ……クズが……」
 今何て!?
 主任の口からどすのきいた声と共に暴言が聞こえてきたのだけれど気のせいだろうか?

「あ、あのしゅに──っ」
 私の言葉をさえぎって、主任は私の手を自分の方へと引き寄せ、私の身体をすっぽりと長い腕で抱きしめた。

 え……?
 何?
 何で私、鬼主任に抱きしめられて……?

 ほのかに香るすっきりとした香水の香りが心地いい。
 安心感が私を包み込む。

「んな顔してんな。悲しい時や苦しい時は泣いたらいい。って、最初にそれを邪魔したのは俺か。これはその詫びだ。特別に胸貸してやるから、しっかり泣け」
 「っ……なんですか、っ、それ……っ」

 滅茶苦茶な言い分なのに、思わず頬が緩んで、私の目からまた熱いものが流れ落ちた。

 

 
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