【更新】雇われ妻ですが冷徹騎士団長から無自覚に溺愛されています
「あっ……いやッ……」

 抗うべく身をよじると、舌打ちをしたランドルフが片手でリーゼの両手首をまとめ上げ、後ろ手に戒めた。
 動けずに固まったリーゼに、ランドルフはさらに口付ける。彼の手はリーゼの体をまさぐり、無理矢理暴こうとしている。
 スカートがたくしあげられ、その中に手が差し込まれた。際どい部分を彼の指がなぞる。

 こんな誰が来るともわからない場所でするような行為じゃない。抵抗することも許されず、されるがまま耐えることしかできない。
 
 己の尊厳を踏み躙られるようで、リーゼは眉間に皺を寄せて、泣き出したくなるのを必死に堪えた。
 リーゼを見下ろす灰褐色の瞳はひどく冷めていて、それがまた一層リーゼの涙腺を刺激した。

 激しい口付けが終わり、ふらりとよろめいたリーゼの体をランドルフの逞しい腕が抱き止めた。
 息つく暇もないほど口付けられ、呼吸もままならなかった。彼の腕の中で肩を上下させながら、酸素を取り戻す。

「リーゼ」

 その声にリーゼは面を上げた。
 いつもは怜悧な光を宿した灰褐色の瞳が黒く濁って見える。
 その瞳がリーゼを征服すべく迫ってきて――

「いやっ!」

 咄嗟に顔を背けてしまったのは、先程までの一方的な行為が脳裏を掠めたから。
 リーゼが明確な拒絶を示すと、ランドルフは目を見開き激昂した。

「なぜ俺を拒絶する!」

 ランドルフの慟哭がリーゼの鼓膜を揺さぶった。
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