【更新】雇われ妻ですが冷徹騎士団長から無自覚に溺愛されています
「ごめんなさい、もう大丈夫よ。昨日はいつの間にか寝ていてしまったの。それで気が付いたら朝になっていて……」
「そうでございましたか。昨夜何度かお声がけをしましたが、お返事がないもので心配しておりました。ええ、もう、本当に心配しておりました」
「ごめんなさい、エイダ……心配をかけて……」
「いいえ、リーゼ様が謝ることは何もございません。全てはあの――」
不意にエイダの視線がリーゼの手首に止まった。途端に彼女の目が三角になる。
なんだろうと思って目線を下げると、手首には覆うようにうっすら赤いアザが付いていた。
ランドルフだ。彼が掴んでいた箇所が跡になって残ってしまっていたのだ。
リーゼはエイダが言及する前にサッと己の手を背後に回して、アザの残った手首を隠した。昨日起こったことを冷静に説明できる心の余裕はまだない。
「……エイダ。あの、申し訳ないのだけれど、湯浴みの用意をしてもらってもいいかしら?私、仕事に行かないと……」
するとエイダは険しい顔のまま、ゆっくりと首を横に振った。
「旦那様から、今日はお休みされるようにと言伝を預かっております。ですからその心配は無用でございます。湯浴みの準備はすぐにいたしますわ」
「……そうなの。……ありがとう」
「……旦那様はいらっしゃいませんからね。どうぞゆっくり寛いでくださいませ」
目元を和らげて微笑んでいるのに、念を押すようにしてランドルフの不在を告げるエイダの顔にはえもいわれぬ凄みがあった。
恐らくランドルフと諍いがあったことはバレているだろう。リーゼが彼と顔を合わせたくないと思っていることも。
「そうでございましたか。昨夜何度かお声がけをしましたが、お返事がないもので心配しておりました。ええ、もう、本当に心配しておりました」
「ごめんなさい、エイダ……心配をかけて……」
「いいえ、リーゼ様が謝ることは何もございません。全てはあの――」
不意にエイダの視線がリーゼの手首に止まった。途端に彼女の目が三角になる。
なんだろうと思って目線を下げると、手首には覆うようにうっすら赤いアザが付いていた。
ランドルフだ。彼が掴んでいた箇所が跡になって残ってしまっていたのだ。
リーゼはエイダが言及する前にサッと己の手を背後に回して、アザの残った手首を隠した。昨日起こったことを冷静に説明できる心の余裕はまだない。
「……エイダ。あの、申し訳ないのだけれど、湯浴みの用意をしてもらってもいいかしら?私、仕事に行かないと……」
するとエイダは険しい顔のまま、ゆっくりと首を横に振った。
「旦那様から、今日はお休みされるようにと言伝を預かっております。ですからその心配は無用でございます。湯浴みの準備はすぐにいたしますわ」
「……そうなの。……ありがとう」
「……旦那様はいらっしゃいませんからね。どうぞゆっくり寛いでくださいませ」
目元を和らげて微笑んでいるのに、念を押すようにしてランドルフの不在を告げるエイダの顔にはえもいわれぬ凄みがあった。
恐らくランドルフと諍いがあったことはバレているだろう。リーゼが彼と顔を合わせたくないと思っていることも。