【更新】雇われ妻ですが冷徹騎士団長から無自覚に溺愛されています
 でも、エイダは何も聞かずにいてくれた。言いたいことはあるようだけれど、ひとまずは。
 その気遣いに甘えて、リーゼは朝からゆっくりと昨日の疲れを癒すように湯に浸かったのだった。

 身なりを整えて、遅めの朝食を食べながら、リーゼの心は沈んだままだった。
 鉛を飲み込んだように胃が重い。エイダ特製のオニオンドレッシングがかかったサラダも無味に感じるほど。

 この結婚は、今後どうなってしまうのだろう。もしかしたら、ランドルフの不興を買ったリーゼはこの家を追い出されてしまうかもしれない。そうしたら、仕事も辞めなければならないのではないだろうか。
 
 色々なことが気がかりで、食事もろくに手がつかない。それでも食べ物を粗末にするのは許せなくて、ただただ機械的に朝食を口に運ぶ。

 執事のマーティンが食堂にやってきたのは、リーゼが食事を終えたのとほぼ同じタイミングだった。

「リーゼ様。スターリング子爵様よりお手紙でございます」
「お父様から?」

 眉をひそめつつ、リーゼは手紙を受け取った。
 父から手紙が来ることなんて滅多にない。忙しくて実家への振り込みを忘れた際に、お金の無心のついでに様子伺いがあるくらいだ。

(また借金でもこさえたのかしら……?まさか詐欺にあったとかじゃないわよね?)

 厄介ごとの予感しかしない。
 悩みの種がまた一つ増えたことに軽い目眩を覚えながら、リーゼは手紙と共に受け取ったペーパーナイフで封を開け、手紙を取り出した。
 だが肝心の手紙の文面を読み進めると、リーゼは目を丸くして言葉を失った。
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