【更新】雇われ妻ですが冷徹騎士団長から無自覚に溺愛されています
 舌を絡め合わせていると、リーゼの中の幸福と悦楽が風船のように膨らんでいく。
 心を交わしてからというものの、彼と交わす口付けは今までよりも格段にリーゼに愉悦をもたらしていた。
 少し前の自分が渇望していた、愛し愛されるという夢想が現実になって、リーゼの全身を優しく包み込む。
 もっと深く彼を感じたくて、リーゼは彼の首にしがみつきながら夢中で舌を動かした。

「好き……ランドルフ様……大好き……」

 口付けの合間に、リーゼはうわ言のように何度も囁く。今まで言えなかった分を穴埋めするように、何度も。

「愛している、リーゼ」
 
 リーゼを抱きしめるランドルフの腕の力が強まって、二人の体が隙間なく密着する。

 時折唇を離して、犬猫が戯れ合うように額や鼻を擦り付け合って、そしてまた口付けて。
 クチュ、クチュと互いの唾液が口内で撹拌される淫らな音が部屋に響く。増大する愉悦が体の芯に熱を灯した。
 
 内側から蕩けてしまいそうなほど、彼とのキスは気持ちがいい。
 けれども少し物足りなさもある。その先に待ち受ける鮮烈な快楽を、リーゼはもう知ってしまっていた。ランドルフが、全て教えてくれたから。

 我慢ができず、待てが出来ない駄犬のように彼の膝の上でゆらゆらと腰を揺らめかせていると、唇を離したランドルフがゴクリと喉を鳴らしてリーゼを見下ろしていた。
 彼もまた欲してくれていると、瞳の奥で燃え盛る熱情が教えてくれる。
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