【更新】雇われ妻ですが冷徹騎士団長から無自覚に溺愛されています
 ハァ、ハァ、と荒く息を継ぎながら、リーゼは己に跨るランドルフを見つめた。
 体を重ねた後にいつも感じていた空虚さは、今は影も形も見えない。あるのはただ、目の前のこの人を愛おしいと思う感情だけ。
 
 だが、ランドルフはというと……先程まで繋がっていたその場所をジッと見つめている。

「この光景は、なかなかにそそられるな」
「〜〜〜〜ッ!!もう!そんなに凝視しないでください!」

 羞恥で唇をわななかせながら、リーゼは隅の方でくしゃくしゃになっていた掛布を引っ張り出して頭まですっぽりと被った。
 その中で丸まっていると、隣に横たわったらしいランドルフが掛布ごとギュッと抱きしめてくる。

「そう拗ねるな」

 むくれるリーゼが見えているのか、ランドルフはご機嫌取りをするように頭部のあたりにキスをしてくる。すぐに心が絆されそうになるのは、きっと惚れた弱みだ。
 
「……じゃあもう見ちゃダメです」
「それは約束できないが」
「え?」

 ……そこは頷くところでは?
 目をパチクリさせていると、バッと衣擦れの音がして視界が一気に明るくなった。掛布を剥ぎ取ったランドルフがリーゼを見下ろして不敵な笑みを浮かべている。

「あんなに魅力的な姿を見逃せという方が無理だ」
「うぅ……」

 悪びれずにのたまうランドルフが少し憎らしい。それに手放しで賛美されてむずがゆくもある。恥ずかしまぎれにじっとり睨むと、彼は肩をすくめてリーゼの頬にキスをした。
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