【更新】雇われ妻ですが冷徹騎士団長から無自覚に溺愛されています
「ランドルフ!あなた、レディの部屋にノックもなしに入るなんて、一体どういう了見なの?!」

 眦を上げたアドリアナがすかさず噛み付く。

「ノックならした。しばらく経っても返事がなかったから入っただけだ」
「まあ!レディの支度というのは時間がかかるものなの。黙って待っているのが紳士というものよ。朴念仁の上にせっかちだなんて、まったくどうしようもない愚息だわ。一体誰に似てしまったのかしら。ごめんなさいね、リーゼさん。私の教育が悪かったばっかりに」
「い、いえ、私は気にしていないので……」
「いいえ!甘やかしてはダメよ、リーゼさん!何事も初めが肝心なんだから。締めておくところはきっちり締めておかないと、どんどん振る舞いが傲慢になっていくわ。男は女がいないと何もできないのだから、ちゃんと教育しておくの。ランドルフは特に頑固だから大変だと思うけれど。もう、本当に困るわよね。昔っからそうなのよ?私の言うことなんて聞きやしなくて……」

 このままだとお説教が延々と続くのでは……と、リーゼは顔を引き攣らせた。
 どう収拾をつければいいかわからない。それでもなんとか宥めるべく、どうどうと手を上下させるしかなかったのだが……。
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