【更新】雇われ妻ですが冷徹騎士団長から無自覚に溺愛されています
 宴も終わり、リーゼはランドルフと共に彼の邸宅に移動した。
 嫡男でありながらなぜか両親と別居しているランドルフは、王都の東側に立派な邸宅を構えていた。今日からここがリーゼの住まう場所となる。
 
 仮面夫婦ではあるけれど別居をしていてはあらぬ噂が立つから……と、この結婚の契約事項を決めた際に、ランドルフから同居を提案されたのだ。リーゼも特に異論はなかったので了承した。

 この部屋は元々客間だったらしい。リーゼが越してくるにあたって改装してくれたのだとか。
 
 ランドルフの寝室は、リーゼの部屋とは別にある。そして今はいわゆる「初夜」にあたる時間だが、当然ながらランドルフの訪れはない。

(まあ、当たり前よね。契約結婚だもの……)

 残念に思うのは間違っている。自分たちは普通の夫婦ではないのだから。
 子供は親戚から養子をもらうから必要ないと宣言していたし、リーゼが妻として跡継ぎを産む必要もないのだろう。

(そもそも、私に対しては全く食指が動きませんって感じだし)

 リーゼの口から自嘲気味笑いがこぼれる。
 
 シンプルな白のウェディングドレスに身を包んだ今日のリーゼは、自分で言うのもなんだが、そこそこ可愛らしかったと思う。
 だが、ランドルフは着飾ったリーゼを見ても何の感想も抱いていないようだった。
 
 式の直前、花嫁のための控室までリーゼを迎えに来たランドルフは、いつもと変わらない――どちらかというと少し不機嫌な態度で『時間だ。そろそろ行こう』と告げただけ。似合っているとかそういう言葉もなければ、目を瞠るとかの仕草もなく。
 あれにはちょっと傷ついた。
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