【更新】雇われ妻ですが冷徹騎士団長から無自覚に溺愛されています
 そんなことを考えているうちに、ランドルフはいつの間にか手紙を読み終えていたらしい。
 顔を上げたと同時に、彼はすぐさま手紙をグシャグシャに丸めてクズ箱へ放り投げていた。

 哀れな姿になった紙片に同情を禁じ得ない。決して顔には出さないが。
 リーゼはサササッと団長室の脇にある小机に移動し、ご機嫌取り用にあらかじめ用意していたコーヒーとレモンクッキーが乗ったトレーを持ち上げる。

「――ご実家からはなんと?」

 彼の机にお皿を置きながら、リーゼは自然な風を装って話題を振ってみた。予想はついているけれど、あくまで世間話の一環として。
 
 するとランドルフの口から忌々しげな舌打ちが飛び出した。

「結婚したい相手がいるなら、来週までに連れてこい、と。いなければ、勝手に見繕ってくれるらしい。まったく、余計なことをしてくれる」
「ら、来週、ですか?」

 皮肉っぽくのたまうランドルフ。
 随分と急な話にリーゼは目を丸くした。
 結婚の催促であることは予想がついていたけれど、まさかそんな急展開になるなんて。心の準備ができていなくて、リーゼの背筋に冷や汗が流れる。
 
「あの、お相手は……?」
「いるわけないだろう。俺は結婚などしない」
 
 ランドルフはガタリと音を立てて椅子から立ち上がると、机に立てかけていた剣を腰に差し、まるで戦場にでも馳せ参じるような面持ちでリーゼを見た。
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