【更新】雇われ妻ですが冷徹騎士団長から無自覚に溺愛されています
 芳醇な香りが立ち上る赤ワインにチビチビと口付けながら、リーゼは目の前のランドルフへチラリと目を遣った。

 お風呂上がりらしく、彼の髪はしっとりと濡れていて艶めいている。
 シャツの上に肌触りの良さそうなシルクのガウンを羽織っていて、これまで目にしたことのない無防備な姿は男の色香が滴っていて、リーゼは目眩を覚えそうになる。

 自然と心拍は速くなって、リーゼは赤らむ頬を誤魔化すようにワインを口に含んだ。嚥下したワインはいつもより甘く、酔いが早く回ってしまいそう。

「スターリングとゆっくり話すのは随分と久しぶりだな」
「そうですね、いつもはなにかと仕事に追われていますから」
「ああ。それにこうしていると二年前を思い出す」

 その言葉にドキッとした。リーゼもちょうど同じことを思い出していたから。

「懐かしいです。フィリス殿下はお元気でしょうか?」
「ああ。息災だと聞いたことがある。そういえば、フィリス様から君への結婚の祝いが贈られてきたと、王太子殿下が言っておられた。後ほどこの家に送ってくださるそうだ」
「えっ!殿下からですか?!ど、どうしてそんな、私なんかに……」
「それだけ君に恩義を感じているということだ。君がフィリス様の身代わりになったからこそ、かのお方は無事輿入れできたわけだからな。君の功績は大きい」
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