【更新】雇われ妻ですが冷徹騎士団長から無自覚に溺愛されています
「今度は私が団長のお役に立てるように、妻として役目を果たしますね」

 昂揚する気分のまま、リーゼはランドルフに忠誠を誓っていた。
 自分の命を救ってくれた、好きな人の役に立てるのだ。しかもそれは自分にしかできないこと。
 
 その特別感が愛されることはないと落胆していた気持ちを昇華してくれるようだった。
 ニコニコと上機嫌で微笑むと、ランドルフは一瞬目を瞠った後、柔らかく目を細めた。

「ああ。俺たちは目的を共有する同志だ。これからよろしく頼む」
「はい!」

 揚々と返事をしたリーゼだったが、直後この結婚でランドルフが支払った少なくない代償が脳裏によぎり、居た堪れなくなって体を小さくした。
 
「あの、団長、すみませんでした……我が家の借金を肩代わりしていただいて……」

 身内の恥が情けなくて、下げた頭を上げられない。
 
 実家の借金は利息が膨らみ、とんでもない額になっていたのだ。離れて暮らしていたせいで現状を知らされていなかったリーゼは、結婚の挨拶のためにランドルフと自領を訪れた際にそのことを伝えられて卒倒しそうになった。

 まだ成人していない弟たちの学費のためだと両親は必死に弁明していたが、カントリーハウスの応接間に見慣れぬ美術品がいくつか増えていたことを、リーゼは目ざとく発見していた。

「いや、気にすることはない。大した額ではなかったからな」
「うぅ……本当にすみません……」
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