【更新】雇われ妻ですが冷徹騎士団長から無自覚に溺愛されています
嫌がらせ
リーゼがランドルフと結婚をして、あっという間にひと月が過ぎた。
簡素な官舎暮らしから一転して、リーゼの生活の質は格段に向上した。
ふかふかのベッドで眠り、エイダお手製の豪華な食事を心ゆくまで楽しめる、贅沢な毎日。最高に素晴らしかった。
懸念していたランドルフとの共同生活も、案外動じずに過ごせていた。というのも、ランドルフは休日もほとんど屋敷で過ごさないのだ。
王太子殿下から王宮に呼び出されていたり、王立学院の剣術指導の特別講師を引き受けていたり、丸一日予定がない日は遠乗りに出かけたりと、リーゼと共に過ごす時間など皆無。動揺など、しようがなかった。
ときたま庭で鍛錬するランドルフを二階の自室から盗み見て、その雄々しさに悶絶するくらい。それくらいの距離感の方が、リーゼにとっても都合が良かった。
ランドルフと深く関わってしまえば、より深く心が惹かれてしまうから。愛を交わすことも情を交わすこともない結婚生活を営む上で、リーゼの恋情は必要のない感情だ。
夫婦として接するのは公の場でのみ。そんな結婚生活は正しく機能していたのだが。
リーゼの頭を悩ませる問題が、一つだけ存在していた。
「リーゼさん、あの……」
文官の執務室で再来月の演習予定をまとめていたリーゼはそう声をかけられ、ペンを止めた。書類から顔を上げると、リーゼの机の前には騎士団付きの新人文官であるロバートが困惑顔で立っていた。
彼が腕に抱えているのは真っ白な花束。
「リーゼさん宛にこちらが届いていて……」
そう言ってロバートはリーゼに手元の花束を差し出した。
小ぶりのユリを中心にユーストマ、カラーリリーと見事に全て白い花で構成されている。綺麗、なのだけれど。
簡素な官舎暮らしから一転して、リーゼの生活の質は格段に向上した。
ふかふかのベッドで眠り、エイダお手製の豪華な食事を心ゆくまで楽しめる、贅沢な毎日。最高に素晴らしかった。
懸念していたランドルフとの共同生活も、案外動じずに過ごせていた。というのも、ランドルフは休日もほとんど屋敷で過ごさないのだ。
王太子殿下から王宮に呼び出されていたり、王立学院の剣術指導の特別講師を引き受けていたり、丸一日予定がない日は遠乗りに出かけたりと、リーゼと共に過ごす時間など皆無。動揺など、しようがなかった。
ときたま庭で鍛錬するランドルフを二階の自室から盗み見て、その雄々しさに悶絶するくらい。それくらいの距離感の方が、リーゼにとっても都合が良かった。
ランドルフと深く関わってしまえば、より深く心が惹かれてしまうから。愛を交わすことも情を交わすこともない結婚生活を営む上で、リーゼの恋情は必要のない感情だ。
夫婦として接するのは公の場でのみ。そんな結婚生活は正しく機能していたのだが。
リーゼの頭を悩ませる問題が、一つだけ存在していた。
「リーゼさん、あの……」
文官の執務室で再来月の演習予定をまとめていたリーゼはそう声をかけられ、ペンを止めた。書類から顔を上げると、リーゼの机の前には騎士団付きの新人文官であるロバートが困惑顔で立っていた。
彼が腕に抱えているのは真っ白な花束。
「リーゼさん宛にこちらが届いていて……」
そう言ってロバートはリーゼに手元の花束を差し出した。
小ぶりのユリを中心にユーストマ、カラーリリーと見事に全て白い花で構成されている。綺麗、なのだけれど。