【更新】雇われ妻ですが冷徹騎士団長から無自覚に溺愛されています
「あの……団長はどうして結婚されたくないのですか……?」

 部下としては少々踏み入った質問ではあるが、訊ねずにはいられなかった。
 ランドルフの答えを待つ間、リーゼの心臓は体から飛び出して駆けて行ってしまいそうなほど急速に高鳴っていた。
 
 知りたい……けど知りたくない気持ちもあって……。
 そんな矛盾した複雑な胸中でランドルフの返答を待っていると、彼は非常にわかりやすく口角を下げた。

「どうしてだと?そんなの、女なんて煩わしいからに決まっている」
「そ、そうでしょうか……?」

 吐き捨てるという言葉が相応しいくらいに乱暴に言い放ったランドルフへ、つい反射的に疑問を呈してしまったのも仕方ない。リーゼも女なのだから。
 だが、不幸にもランドルフの機嫌はさらに悪化した。ギロリと睨まれ、さすがのリーゼも慄く。
 
「そうだ。羽虫のように集ってきては、キーキー喚いてうるさいし、その話も要領をえないものばかりだ。その割に肝心の言いたいことははっきり言わないし、こちらが意にそぐわないことをすると、不機嫌になったり泣き出したりする。全くもって面倒極まりない存在だ。そんな地獄に身を落とすなんてまっぴらごめんだ」
「はあ……」

 偏見がすごい。
 世の中そんなかしましい女性ばかりではないと、声を大にして言いたい。

 (というか、目の前に一応(わたし)がいるんですが……)

 あまりに酷い言い様にリーゼは思わず呆けてしまう。
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