【更新】雇われ妻ですが冷徹騎士団長から無自覚に溺愛されています
「ベルさんのいう通りですよ。このままエスカレートしていけば、リーゼさんにさらに危害が及びかねません。今すぐ団長に言うべきです。リーゼさんは団長の奥様なんですから。夫には妻を守る義務があります」
「……そ、そうだね」

 私たちは普通の夫婦じゃないから、とはよもや言えまい。
 リーゼは苦笑いを浮かべて、彼の助言を受け流す。

「団長はお忙しいから、心配をかけたくないの。だから大丈夫。ありがとう、ロバート。気にかけてくれて」
「い、いえ……じゃあそういうことなら、代わりに僕が今度ヘインズ伯爵令嬢へ抗議します」
「えぇ?」

 突然何を言い出すのかと、リーゼは目を剥いた。
 
「お、威勢がいいねぇ。新入りくん」
「ベルさんも煽らないでください。ロバート、そんなことしなくていいから」

 無関係のロバートが口を挟めば、余計に問題が拗れそうだ。変に庇われることで、リーゼとロバートの仲を勘ぐられても困る。
 
 ブンブンと勢いよく首を横に振るも、ロバートは真剣な顔つきのまま。
 その上、一歩分距離を詰められる。心臓が不吉な鼓動を打つのを感じながら、リーゼは近くなった分、顔を上に傾けてロバートを見やった。
 彼の瞳に熱がこもっているように思えるのは、気のせいだろうか。
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