【更新】雇われ妻ですが冷徹騎士団長から無自覚に溺愛されています
『ランドルフ様。これ、今日のお昼に作ったんです。よろしければお召し上がりください』
その日仕事だったランドルフに夕食の後にコーヒーと共に振る舞うと、彼は意外そうにバスケットにこんもり盛られた焼き菓子を凝視していた。
『あの、どうかされました?』
『君は料理までできるのか?』
『……実家でもやっていたんです。両親が画家のパトロンをしすぎて、料理人も雇えなくなったので……』
学院に行きながら家事と炊事も担う日々は、言葉では言い表せないほど大変だった。気絶するように床で寝ていたこともある。
苦笑するリーゼにランドルフは一瞬眉をひそめた後、『いただこう』とバスケットに手を伸ばした。
彼が真っ先に摘んだのはもちろんレモンクッキー。クッキーの表面にかけたアイシングに甘く煮詰めたレモンの皮を刻んで混ぜ込んでいる、リーゼ自慢の一品だ。
サクッと小気味よい音を立てて早速齧り付くランドルフを、リーゼは神妙な顔で見つめる。
ランドルフは二口でクッキーを食べ終えたあと、『美味いな』と目を細めて呟いた。
『お口に合ってよかったです』
『ああ、ありがとう。これも美味い。ラズベリーか?』
次にランドルフが摘んだのは、赤いジャムが乗った彩り鮮やかなジャムドロップス。こちらはそのまま一口で放り込んでいた。
『はい。お砂糖は少なめなので少し酸っぱいかもしれませんが』
『俺はこの味が好きだな』
そう言って、ランドルフはまた一つ口に含む。
好きだと言われたのは紛れもなくクッキーだけれど、リーゼの胸がキュンと疼いた。
家でリラックスをしているからか、それとも好きな焼き菓子を食べているからか、多分両方な気がするけれど、ランドルフの表情はいつもよりも穏やかだ。
柔らかな微笑みは、勇ましい男性であるのに美しいという言葉がよく似合っていて。直視できずにリーゼはそっと目を伏せた。
その後も他愛のない会話を繰り広げ、すっかりお茶会の様相になった食後のコーヒータイムは夜遅くまで続いたのだった。
その日仕事だったランドルフに夕食の後にコーヒーと共に振る舞うと、彼は意外そうにバスケットにこんもり盛られた焼き菓子を凝視していた。
『あの、どうかされました?』
『君は料理までできるのか?』
『……実家でもやっていたんです。両親が画家のパトロンをしすぎて、料理人も雇えなくなったので……』
学院に行きながら家事と炊事も担う日々は、言葉では言い表せないほど大変だった。気絶するように床で寝ていたこともある。
苦笑するリーゼにランドルフは一瞬眉をひそめた後、『いただこう』とバスケットに手を伸ばした。
彼が真っ先に摘んだのはもちろんレモンクッキー。クッキーの表面にかけたアイシングに甘く煮詰めたレモンの皮を刻んで混ぜ込んでいる、リーゼ自慢の一品だ。
サクッと小気味よい音を立てて早速齧り付くランドルフを、リーゼは神妙な顔で見つめる。
ランドルフは二口でクッキーを食べ終えたあと、『美味いな』と目を細めて呟いた。
『お口に合ってよかったです』
『ああ、ありがとう。これも美味い。ラズベリーか?』
次にランドルフが摘んだのは、赤いジャムが乗った彩り鮮やかなジャムドロップス。こちらはそのまま一口で放り込んでいた。
『はい。お砂糖は少なめなので少し酸っぱいかもしれませんが』
『俺はこの味が好きだな』
そう言って、ランドルフはまた一つ口に含む。
好きだと言われたのは紛れもなくクッキーだけれど、リーゼの胸がキュンと疼いた。
家でリラックスをしているからか、それとも好きな焼き菓子を食べているからか、多分両方な気がするけれど、ランドルフの表情はいつもよりも穏やかだ。
柔らかな微笑みは、勇ましい男性であるのに美しいという言葉がよく似合っていて。直視できずにリーゼはそっと目を伏せた。
その後も他愛のない会話を繰り広げ、すっかりお茶会の様相になった食後のコーヒータイムは夜遅くまで続いたのだった。