【更新】雇われ妻ですが冷徹騎士団長から無自覚に溺愛されています
「私は……嫌じゃありません。緊張はしていますけど……でもそれは……こういうことが、初めてだから……」

 羞恥に押しつぶされそうで、最後の言葉は消え入る寸前だった。赤く熟れた顔を隠すように彼の肩に顔を押し付けると、力強く全身を抱きしめられた。

「わかった。なら、俺はもうやめてやれない。君はただ、俺に全てを委ねていればいい」

 体が離れて、顎をクイと持ち上げられる。
 ランプの灯りの下で揺れる彼の双眸を見つめていたら、気付けば唇が重なっていた。

 触れ合った部分が熱い。
 離れたかと思えば、また重なって、何度もその行為を繰り返す。
 ただ皮膚と皮膚を触れ合わせているだけなのに、どうしようもないほどに背筋に興奮が走った。

「ふぅ……ん……」

 無意識に熱い吐息をこぼすと、わずかに開いた隙間から生温かい何かがリーゼの口内に入り込んでくる。
 くちゅ、と淫らな水音を立てて、それはリーゼの舌を絡め取った。
 唾液を擦り付けるようにリーゼの舌をくまなく舐めるそれは、ランドルフの舌だ。

(これも、キスなの……?)

 ただ唇を合わせるのとは違う、己の内側を侵食されるような未知の行為にリーゼは困惑する。
 ランドルフの舌は丁寧にリーゼの舌をねぶり、まるで動きを教え込むようにゆっくりと絡めていく。
 真似をしてリーゼがぎこちなく舌を動かせば、よくできましたと言わんばかりに後頭部を撫でられた。
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