【更新】雇われ妻ですが冷徹騎士団長から無自覚に溺愛されています
「ん……んぅ……ふ……はぁ……」

 口付けの角度が変わるごとに鼻にかかった吐息が己の口から出ていく。頭がクラクラするのは、この熱に浮かされているからか、それとも……

(ちゃんと、息、しなきゃ……)

 酸素が足りなくなってきたのか、だんだん息も苦しくなってきた。
 呼吸をしなければと思うものの、口は塞がれている。ならば鼻で、も思っても、意識が口内で蠢く彼の舌に集中しすぎて体がついていかない。
 
 目を閉じて暗闇だったはずの視界が徐々に白み始める。意識も薄れそうになったそのタイミングで、ランドルフの唇がようやく離れた。
 刹那、全身の力が抜けて、リーゼは思わず彼の胸にしなだれかかった。

「鼻で息をするんだ」
「は……はぃ……」

 苦笑しながらランドルフが、肩で息をするリーゼの背中を撫でさすってくれる。
 呼吸が落ち着いた頃に顔を上げると、目元を柔らかく下げたランドルフと目が合った。
 彼はリーゼの眦にキスを一つ落とし、軽々とリーゼの体を持ち上げた。
 ベッドの中央へ横たえるやいなや、ランドルフはリーゼの寝衣のボタンを一つ一つ外していく。

 鉄壁の防御を誇っていたリーゼの胸元がはだけ、胸の膨らみがあらわになる。そこへ視線が注がれているのを感じて、リーゼは目を固くつぶって羞恥に耐えた。
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