RAVEN CODE
芹に案内されたのは、大きな窓のある洋風の一室だった。
お屋敷はずいぶん古そうだけれど、和洋折衷を採用しているらしい。
洒落た脚の丸テーブルに、控えめで美しい刺繍がされているフードカバーの山が二つ。
朝食の準備はすでに整っているようだった。
芹に椅子を引かれて、おとなしく礼をして腰をおろす。
その紳士的な振る舞いと、昨夜の建物での一見はどうしても乖離してしまう。
「……あの、」
「うん?」
「わたしが、頂いても、いいんでしょうか。芹さんのお兄さまの分では」
「はは、お兄さま。苑はね、この部屋では朝食をとらないよ。というか、もう出かけていないし。これはすいちゃんの分だから、食べて大丈夫。むしろ、食べてくれないと。食欲がなさそうでも三口は食べさせろ、って苑から言われてるから」
何か、仕込まれている可能性は。
「でも、本当に食べれないようだったらいいよ。あれだったら、おれがすいちゃんの分も食べようかな」
大丈夫、低そうだ。
首を横に振って、お礼を言ってからフードカバーをとる。
パンとスクランブルエッグとサラダが、これまた綺麗な洋物のお皿に載せられていた。スープ皿には何かのポタージュまである。
手を合わせて、ポタージュスープにまず口をつける。
冷製のコーンポタージュだった。
とても美味しかったけれど、喉に通してしばらくすると胃に鈍い痛みが走る。
いつもしないことをしているから、身体が追い付いていないのだ。心については、もう言うまでもなく。