RAVEN CODE
「一緒に悪いことしたり、気持ちいいことしたりする友人? 逆に、すいちゃんはそういう友人、どれくらいいる?」
「……わたしが、聞いてみたかったのは、このお家にお友達は来ないのかなって、ことなのだけど」
「そうだった? 来ないよ、だれも。招いてもいいって思える友人はいないし」
「そう、なんだ」
「おれも、すいちゃんにいくつか質問したい」
「……答えられることで、あれば」
「いや、すいちゃんは、答えるから。とりあえず、一度、座ろう」
すたすたとソファまで歩いていった芹は、静かに腰をおろした。
「来ないの?」
振り返り、手招きをされる。
選択肢を与えているようで、何一つ与えていない。
それがこの男のやり方なのだと、もうすでに掴みつつある。だからと言って、こちらにできることはないけれど。
芹の隣に、かなりの間をあけて腰をおろす。
ソファは思ったよりも深く沈んだ。
「ここは、映画を見るだけの部屋。適当に流しておこうか。好きなジャンルとかある?」
「……特に、は。あの、質問は何?」
「じゃあ、いいや。質問は、別にそんなに大したことじゃないけど。すいちゃんこそ、友達いるのかなとか」
「……わたしも自分の家に友達を招いたことは、ないんだけど、高校に友達は、少しはいるかな」
「男の友達はどれくらい?」
「それは、……いない」
ぱっと頭に浮かんだのは、鳥篭の幹部の男たちだったけれど、友達かどうかで言われると微妙なところだった。
だから、嘘はついていない。
芹には、ふぅん、と、聞いておいて興味があるのかないのか分からない相槌を打たれる。
それから、彼は、背もたれのところで肘をついて、何を考えているのか分からない顔で、首を傾げた。