言の葉は
その内、家族団欒の光景があまりに眩まぶしくて、知らず知らずの内に視界しかいが涙なみだで滲にじみ、溢あふれた雫しずくは押し出されて頬を伝つたう。僕は歯はを食くい縛しばり、うつむき、苦笑くしょうする。
戻れるなら戻りたいと──────
毎日、見るこの夢の終わりには必ずサプライズがある。母が僕を通りすぎキッチンに行く。
あまりに唐突とうとつで弟は理解出来てない。
父は奥の襖ふすまへ向かい隠してあったものを丁寧に取り出す。
そうして、父と母の連携れんけいで、母からは6本の蝋燭ろうそくが並んだ誕生日ケーキと、父から包装紙ほうそうしに包まれたプレゼントが弟、つまり当時の僕に与えられた。
幼い僕は「見ていい?」と包装の封ふうを開あけようとしていた。母は蝋燭に火をつけながら、「まだだめ」と嗜たしなめて、姉は蝋燭で光輝くケーキを見つめていた。
どうやら食べることを諦めたようだ。姉は元来がんらい、少食であまり食べれない。
蝋燭6本に灯火がつく、父と母と姉は、あのハッピーバースデーの短い言葉を手を叩いて歌い、姉は手元にあるクラッカーを鳴らして、「おめでとう、遥斗はると」と言い、父も母も微笑ほほえみ、「おめでとう」を口にする。