白き妃は隣国の竜帝に奪われ王子とともに溺愛される

愛すること

「アデリナ、これでもう、邪魔するものはないだろう?」

 薔薇でいっぱいの薔薇園になっている温室の中で、私たちは互いに腰を抱き合っていた。誰も訪れない、早朝の私たちの楽園。

 もう、私もなにも恐れることなく、彼に愛を告げられる。

「アデリナ。私に言うことは?」

「陛下、私は陛下を愛しています……一人の、男性として」

 とは告げたものの、初めての告白に、私は顔から耳朶から指先までキッと真っ赤になってしまっている。だって、それだけの熱を感じているから。

「全く……言えたと思ったらこれだ。次のことに耐えられるかが心配だ」

「次?」

 私は首を傾げた。



 次とは輿入れして、妻としてただ夫に身を任せる、それだけのことだろう。それだけの知識しかなかったのである。

 それを、陛下に告げる。



「アデリナ……そなたは、一応バント王国の第四妃であったはずなのに……。全く可愛く愛らしいのだな。全てを私が教えていくのが楽しみで仕方がない」

 嬉しそうにしている陛下の言葉もよく分からず、私はぽかんとして彼を見ていた。



「アデリナ。……まず、口づけだ」

「口、づけ……」

「そなたからしてみろ? でないと、認めない」

 認めない、といわれて、私は慌てて口づけをする。ガチンと、歯があたる勢いで。



 私は、こんなのどうしてみながしたがるのか、と困惑する。そして、その困惑顔のまま、陛下を見あげた。



「口づけから教育とは……、全く」

 そういうと、陛下は私の唇に唇を軽く押しつけた。そして、何度も啄んで、吸い上げて、奥にまで絡めて。

 ありとあらゆる口づけを、一心に受け、私はその官能で足が立たなくなってしまう。それも、元々抱きしめていたたくましい腕で支えてしまう。



「陛、下……」

「ああ、可愛いな、アデリナ。本当になにも知らないのだな……ああ、そうだ」

 思い出したように陛下が蕩けたような顔のままで見る。

「陛下、ではなく、ドラグーンと呼べ。それが俺の名だ」

「……ドラ……、グ……」

 恥ずかしくて呼べなくて、私は何度も繰り返す。

「いまさら、恥ずかしい、です……」

「ちゃんと言わないと、お仕置きが待っているぞ?」

 揶揄するように意地悪げにククッと笑う。そして、指で、さっきの動きを再現するかのようにいたずらをした。

「んっ……ドラ……グーン、さま」

 ようやく言えた頃には、私はまるで虫の息だった。

「ああ、可愛い、アデリナ……一生私のものでいてくれ」

「はい、ドラ……グーンさま、私は一生あなたのものです」

 こうして、私は愛を知り。そして、さらに深い愛を知るのだった。

「もう誰にも渡さない。そなたは私だけのものだ、いいな?」
 そう言って、陛下が私からの愛も求めようとする。

「はい、ドラグーンさま。……私はあなただけのものです」
 そう誓約すると、陛下は私の腰を強く抱着直して、私を引き寄せる。

「この瞳も、髪も、熟れた唇も、すぐに赤くなる愛らしい耳朶も……」
 そう言って、わざと耳元で囁く。すると、陛下の吐息が耳朶にかかって、わかりやすく私の耳朶が赤くなる。

「ああ、可愛い。愛おしい。なににも代えがたい我が半身。もう離さない。覚悟しておけ」
 その赤く熟れた耳朶を、唇で食みながら、陛下が私に宣言をする。

「んっ……ええ、離さないで」
 私は、そう答え、彼の首に腕を回し、しがみつくのが精一杯だった。
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