愛し愛され、狂い焦がれる。
別れ
「別れようぜ、梨緒。俺、営業部の玲香と本格的に付き合い始めたから」
「…………え?」
その日は、突然訪れた。
人生初の彼氏が出来て…半年後のこと。
「…梨緒って、あんまり笑わないし」
「面白さがないし」
「歌の趣味も合わない」
「エッチは積極的じゃないし」
「第一、恋愛向いてないよね」
「………」
ここは、城西建設株式会社。
地方にある中小規模の建設会社だ。
従業員数は100人前後と、そこまで大きくは無い。
しかも殆どが技術者として工事現場に出ており、本社勤務の内勤者は極わずかだ。
そんな本社の裏庭。
突然呼び出され、そう告げられた。
「…ふぅん、そっか」
私、安永梨緒。高卒でこの会社に就職し、総務部に所属している26歳。
地元の高校に進学し、地元の会社に就職した、根っからの地元大好き人間。
「…玲香って。兼森さん? 本格的にって、どういうこと?」
「はっ。考えれば分かるだろ? 梨緒と付き合いながら片手間で玲香と付き合っていたんだけど、梨緒より玲香の方が色々と良くて。玲香を本命にするって話」
そしてこの男。同じく総務部の貞尾仁、28歳。
私と秘密の社内恋愛をしながら、他の部の女と秘密の社内浮気をしていたらしい。
「…器用だね」
「だろ、俺くらいになると余裕。ってことで、梨緒。今後は『先輩』として厳しくするからな」
「仁…何それ」
「何それ、じゃねぇ。何ですかって言え。…もう俺にタメ口使うんじゃないぞ。あと、貞尾先輩な」
「………」
ここまで馬鹿な人だと思わなかった。
見抜けなかった自分に、嫌気が差す。
私は入社してからずっと総務部で、仁は1年前に人事異動でやってきた。
そこから私たちは『採用担当者』としてペアを組み、工業高校に挨拶をしに行ったり、就職フェアに参加したりしている。
今までは付き合っていたから良かったけれど。
別れを告げられた今、仁とペアで行動するには少し気まず過ぎる。
大体、私も見通しが甘かった。
同じ部署で付き合うものじゃない。
別れた時のことまで考えておかないと。
こうなってしまうとどうしようも無い。
「…………え?」
その日は、突然訪れた。
人生初の彼氏が出来て…半年後のこと。
「…梨緒って、あんまり笑わないし」
「面白さがないし」
「歌の趣味も合わない」
「エッチは積極的じゃないし」
「第一、恋愛向いてないよね」
「………」
ここは、城西建設株式会社。
地方にある中小規模の建設会社だ。
従業員数は100人前後と、そこまで大きくは無い。
しかも殆どが技術者として工事現場に出ており、本社勤務の内勤者は極わずかだ。
そんな本社の裏庭。
突然呼び出され、そう告げられた。
「…ふぅん、そっか」
私、安永梨緒。高卒でこの会社に就職し、総務部に所属している26歳。
地元の高校に進学し、地元の会社に就職した、根っからの地元大好き人間。
「…玲香って。兼森さん? 本格的にって、どういうこと?」
「はっ。考えれば分かるだろ? 梨緒と付き合いながら片手間で玲香と付き合っていたんだけど、梨緒より玲香の方が色々と良くて。玲香を本命にするって話」
そしてこの男。同じく総務部の貞尾仁、28歳。
私と秘密の社内恋愛をしながら、他の部の女と秘密の社内浮気をしていたらしい。
「…器用だね」
「だろ、俺くらいになると余裕。ってことで、梨緒。今後は『先輩』として厳しくするからな」
「仁…何それ」
「何それ、じゃねぇ。何ですかって言え。…もう俺にタメ口使うんじゃないぞ。あと、貞尾先輩な」
「………」
ここまで馬鹿な人だと思わなかった。
見抜けなかった自分に、嫌気が差す。
私は入社してからずっと総務部で、仁は1年前に人事異動でやってきた。
そこから私たちは『採用担当者』としてペアを組み、工業高校に挨拶をしに行ったり、就職フェアに参加したりしている。
今までは付き合っていたから良かったけれど。
別れを告げられた今、仁とペアで行動するには少し気まず過ぎる。
大体、私も見通しが甘かった。
同じ部署で付き合うものじゃない。
別れた時のことまで考えておかないと。
こうなってしまうとどうしようも無い。
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