愛し愛され、狂い焦がれる。
翌日朝。
総務部室に入ると、一際不機嫌そうな仁の姿があった。
「…おい。お前のせいで反省文を書かされることになっただろうが。何で俺が悪いみたいに報告してんだよ」
「私はあくまでも、事実を述べただけだし」
「……調子に乗るなよ…」
調子に乗るなというのはこちらの台詞だ…。
今の状況、社内での立場が危ういのは、どう考えても仁の方。
身の程を知った方が良い。
しかし、昨日の中井先生との時間が夢のように感じる。
8年ぶりの再会初日で、あんなに深く愛されるなんて。
ましてや…この8年間ずっと、中井先生の心の中に私がいたなんて。
驚いた、という言葉では片付かないくらいの衝撃。
それ故に…目の前にいる仁のことなんか、本当にどうでもよくなっていた。
「あ、安永さんおはよう」
「おはようございます」
仁に反省文を書くよう命じた上司。
その人の姿を見て、仁は焦って机に向かう。
…そういうところも、ダサい。
結局、採用担当として今後も仁を使うかどうかは、まだ結論が出ていないみたいだけど。仁に何らかの罰が与えられるのは確定みたい。
…ツケは、最終的に自分に回ってくる。
それの良い例だ。