愛し愛され、狂い焦がれる。
逢瀬
「安永……好き。好きだ…」
「…先生」
それから毎日。
仕事終わり、私と中井先生はあの河川敷で逢瀬を重ねた。
優しく抱き締め、何度も何度もしてくれるキス。
そして…日に日に増す。
先生からの愛情表現。
まるで空白の8年間を埋めるかのような…甘くて熱くて、優しい時間。
「…安永」
「…はい」
「今更だけどさ、僕で良かったのか?」
「…え?」
キスの合間。
少しだけ潤んだ瞳をした先生は、唐突にそう言い放つ。
「再会できた喜びで…勢いよくキスまでしてしまったけれど。今になって思うんだ。僕は40歳で、お前は20代だということ…」
「…」
今更すぎるその一言に、フッと笑いが少し零れた。
「18と32はダメな気がしますけど、26と40は良いんじゃないですかね。元生徒だし。成人していますし」
「…そういうことを聞いているんじゃないんだけどな」
顔を優しく掴まれ、また唇を重ねる。
…先生が、年齢差を気にしているのならば。
それは不要な悩みだ。
「…年齢なんて気にしなくて良いと思います」
私の顔に触れている先生の手を軽く握る。
温かく、ゴツゴツした…大きな、手。
「18歳だったあの頃、気になる32歳の先生は、近くて遠い存在でした。私が相手されるわけないのだから…。そう思い封印した、あの感情。…卒業の時に消したと思って忘れていた『それ』は、どうやら今もまだ…鮮明に私の中に残っていたみたいです」
「やっぱりあの頃から…そして今も。中井先生は私の中で特別な存在…。…再会して、再認識…しました」
「…相手を想う気持ちに、年齢なんて関係ないと思います。だから先生は…そんなこと気にしなくて良いのです」
愛おしいものを見るような、優しい目をしている先生。
指を私の唇に当て、そっと撫でる。
その手つきに、また心臓の鼓動が早くなった。
「…先程の先生の問いに、回答します。…私は、先生が良いです」
「……」
「先生が、良い…」
「…安永」
お互い背中に腕を回して抱き締め合い、服を掴む手に力を込める。
煩い心臓の音は、自分か先生か…どちらのものか分からないけれど。
無性に先生が欲しくて、愛おしくて堪らない。
そんな強い感情に、脳が支配される。
「………安永。…車、行こっか」
「…はい」
そっと手を引かれ、先生の車に向かう。
繋がれた手は、汗で少し濡れていて恥ずかしい…。