愛し愛され、狂い焦がれる。
継続
「安永さん、ごめん」
そう言って、上司は頭を下げた。
定時後の総務部室。
上司と2人きりになったタイミングで、急に謝罪をされた。
「…何ですか、突然」
「いや、貞尾くんのことなんだけど。…どうも、採用担当者から外せそうにない」
「…え?」
眉間に皺を寄せ、困ったような表情をしている。
…いやいや。
あれだけのことをして、まだ外せない?
今の仁って、会社の顔に泥を塗るようなものだけど…。
「社長と話したんだ。貞尾くんについてのこと。安永さんに対することもね。…採用担当を別の人にした方が良いって社長も言ったんだけど…代わりがいないんだ」
「だからと言って、安永さんに1人任せるというわけにもいかず…。ごめん、嫌かもしれないけれど…暫くは現状のまま、継続でお願い」
……びっくりした。
代わりがいないから外せない?
本当に、この前の就職フェアでの仁を見て欲しい。
動画でも撮っておけば良かったかな。
社長も上司も、実際にその様子を見ていないから、そんな生温いことが言えるのだ。
代わりがいないこと以前に、あんな人を『担当者』として外に出す方が問題だと言うことに気付いて欲しい。
あれが担当者として君臨している限り…どんなに求人票を出しても、高校生は入社して来ないよ。
……なんて、そう思うけれど。
下っ端の私には、それを意見できる立場に無い。
「…わかりました」
大人しく、従うしかなかった。