愛し愛され、狂い焦がれる。
「あ、安永さ~ん」
「………」
「仁くんから聞いたと思うんですけどぉ、ごめんなさいね。何だか私が取っちゃったみたいで」
「………」
兼森玲香。
私より4歳年下のくせに生意気だ。
少しピンクが掛かった長い髪を綺麗に巻いている。
化粧もバッチリ。こういうのが所謂『男受けが良い』と言うのだろうか。
私とは、正反対の人。
「仁くんって性欲が凄く強くて。毎日求められて体が持たないですよねぇ。…あ、安永さんはエッチさせていなかったんですっけ? それとも、抱いて貰えなかった? …いけない、ごめんなさいね。ふふっ」
……本当、癇に障る女。
別にエッチをさせていなかったわけじゃない。
仁の独りよがりなその行為に、嫌気が差していただけ。
本人は気付いていないと思うけれど。
『自分が気持ちよくなったら終わり』
そんな態度が、見え見えだった。
兼森さんはそれに気付いていないのかな。
それとも、仁は私に対してだけそうだったのかな。
…私が…エッチに積極的じゃなかったから…?
…分からない。
男性経験、仁が初めてだったから。全然分からない。
とはいえ、今更何を考えても無駄だけれども。
「兼森さん」
「ん?」
「スカートのチャック、開いているよ」
「えっ!?」
…あくまでも、冷静を装う。
別に良いの。
相手に何を言われても。
私が何を思っても。
仁の彼女というポジションは、二度と戻ってこないのだから。